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酒飲みの意地
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日本酒の醸造技術は飛躍的に進歩したそうだ。
江戸時代のお殿様が口にした極上品より遙かに旨い酒を
現代の庶民は飲むことができるという。
有難いことだ。
技術の進歩に感謝したい。

ただ、酒造りの技術にもいろいろあって、
技術と呼ぶに値しない怪しい手段もある。

1985年、オーストラリア産のワインに、
不凍液(ジエチレングリコール)が添加される事件があった。

ジエチレングリコールは毒物である。
その毒物は、作業上のミスでワインに混入してしまったのではない。
故意に混ぜられたのである。
貴腐ワインのような旨味が増すからだ。
柔軟な発想といえなくもないが、
賞賛すべきものではないし、毒物の添加は技術ともいわない。
犯罪である。

毒物は論外だけれど、怪しい手段は他にもある。

日本酒には、醸造用アルコールや酸味料を添加して造る酒がある。
水あめが添加された日本酒もあって驚かされる。
醸造用アルコールや酸味料、水あめは毒物ではない。
それらを酒に添加するのも合法である。
しかし、添加する目的はジエチレングリコールと同じだから、
醸造技術の進歩とは認め難い。

認め難いという点では、醸造用アルコールを添加した日本酒を
「本醸造酒」と呼ぶのは、いかがなものか。
何がどのように「本醸造」なのか説明できる人はいないだろう。
私の感覚では詐欺としか思えない名称である。

旨ければ原料や製法は問わないとする考え方には一理ある。
しかし、本件は味覚の問題ではない。
なにを支持するかといった、飲む側の姿勢の問題なのである。

世の中にはたくさんの日本酒が流通しているが、
米と米麹だけで造られた日本酒もあれば、
変なものが添加された日本酒もある。
どちらを支持するか。
そういう問題なのである。

原料や製法については、
最終的には蔵元の良識を信用するしかないのだけれど、
貴腐ワインまがいの毒物を飲まされるのはご免だし、
変なものを添加する「技術」にも賛同できない。

だから、添加酒は意地でも飲まないし、
意地を張らなくても飲まずにいられる。

そもそも、酒は生活必需品ではないのだ。
食べ物や水がなければ生きていけないが、
人は酒を飲まなくても死なないのである。

酒はそういうものだから、
変なものが添加された日本酒をわざわざ飲む理由が
私には思いつかない。

世の中に添加酒しか存在しないのであれば、
飲まずに済ますだけのこと。
消費者には「買わない」という選択権がある。

プレミア価格の酒も同様に、選択権を行使して買わない。
飲みたいならもっと金を出せとばかり、
流通過程で価格が高騰するような商品は意地でも買わない。
意地を張るまでもなく、高くて買えないけどね。
by hikihitomai | 2009-04-16 22:52 | 物見遊山
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