雑誌「Newton」12月号の中吊り広告を思いだし、 今日のblogはこのネタ、つまり酒のサカナはこれにしようと決めた。 12月号のサブタイトルは「円、球、そしてΠ(パイ)」である。 球がちょうど納まる円筒を想定する。 その円筒にちょうど納まる円錐も考える。 このとき、体積の比率は、 円錐:球:円筒=1:2:3 とてもシンプルな比率である。 たぶん「Newton」にも掲載されているだろう。 そこで、対抗するわけではないが、 以下、雑誌に掲載されていそうにないネタをサカナにする。 円錐、球、円筒の体積計算には円周率という無理数を必要とする。 しかし、体積の比率は1:2:3という有理数、しかも自然数で表現できる。 無理数同士の比率が有理数になっても不思議はないのであるが、 1:2:3という簡素な比率は、ちょっとした驚きである。 この比率の発見者は、 ギリシアの天才数学者アルキメデス(紀元前287生~212没)。 この時代には微分も積分もない。 肝心の円周率も、精度が数桁しかない時代であるから、 体積比1:2:3は、大発見と言えるだろう。 天才も美しい比率に魅了されたようで、墓石にそれを記すよう望んだという。 ただし、アルキメデスが言及したのは、 球:円筒=2:3 の部分だけで、円錐は含まないとする説もあり、 Wikipediaの記述もそうなっている。 アルキメデスの墓を確認すれば真相は明らかになるのだろうが、 残念ながら墓は失われたままである。 とまあ、以上が前フリで、ここからが本題(笑)。 アルキメデスから約2千年、 フランスの画家セザンヌ(1839生~1906没)が興味深い言葉を残した。 「自然を円筒、球、円錐として捉えよ」と。 どうです、ゾクッとしませんか? キュビズムに多大な影響を与えたとされるこの言葉は、 簡素な体積比をもつ円筒、球、円錐で自然を捉えろと言っている。 もともと印象派の画家であったセザンヌが、 独自のスタイルに変遷する過程で生みだした言葉だという。 美を追求する画家の目に映ったものは、 数学者が発見した美と共通する何かがあるのかもしれない。 二人の偉人が異なる経路をたどって同じ頂上に到達したのだと考えると、 酒がますます旨くなるのである。
by hikihitomai
| 2009-10-27 23:01
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