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青い虫
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中日ドラゴンズのコーチになった星一徹は、
伴宙太の前で大リーグボール2号を実演して見せた。

ジャイアンツの星投手が足を高くあげると、青い虫が飛んで行き、青葉にとまる。
これが「消える魔球」の正体じゃ、わっはっは。

わっはっは、と笑ったかどうかは記憶が定かでないが、
「巨人の星」にはそんな場面があった。

子供の頃、再放送も含め、何度見たかわからないくらい見たものだ。
マンガだから許されるとはいえ、ボールが消えるというアイデアが凄い。

けれど、もっと凄い魔球がある。
名づけて大リーグボール2号「青い魔球」。
ホームプレート付近に到達すると、ボールが青く変色するのだ。

星一徹が解説すると次のようになる。
ジャイアンツの星投手が足を高くあげると、無数の青い虫が飛んで行き、ボールにとまる。
これが「青い魔球」の正体じゃ、わっはっは。

一般的にバッターは死球を怖れる。
まして、青い魔球を体に受けるのは回避したいだろう。
ぶつかったが最後、虫が潰れて汁が飛び散る。
怖ろしい魔球である。

死球も怖いが、青い魔球は打つのも怖い。
無数の虫が張り付いたボールを打てば、
ぷちゅ、という気持ちの悪い音がするはずだ。
体液も飛び散るだろう。
打撃に伴い、生理的な嫌悪感に訴える魔球である。

おぞましい魔球もある。
名づけて大リーグボール2号「バッターが消える魔球」。
ボールがホームプレート付近に到達すると、バッターが消えてしまう。

星一徹が解説すると次のようになる。
ジャイアンツの星投手が足を高くあげると、
無数の青い虫が飛んで行き、バッターの体中に張り付く。
これが「バッターが消える魔球」の正体じゃ、わっはっは。

青い虫が張り付いても保護色にはならない。
そこにいることは誰の目にも明らかである。
しかし、そんな姿は見たくもない。
皆は目をそむけるから、バッターが消える魔球である。

バッターも、野球どころのサワギではないだろう。
無数の虫が体中に張り付く様子を想像すると、怖ろしい。
まさに魔球である。

哲学的な魔球もある。
ピッチャーのアイデンティティーに関わる根本的な問題を提起する。
名づけて大リーグボール2号「ピッチャーが消える魔球」。
ボールがホームプレート付近に到達すると、ピッチャーが消えてしまう。

星一徹が解説すると次のようになる。
ジャイアンツの星投手が足を高くあげると、
無数の青い虫が飛んで来て、ピッチャーの体中に張り付く。
これが「ピッチャーが消える魔球」の正体じゃ、わっはっは。

ピッチャーが消えたところで、打撃には何の支障もない。
工夫を凝らして投げたのに、簡単に打たれてしまう。
無駄に怖ろしい魔球である。


というわけで、以上の話を飲み屋の元オネエサンにしたら、割と受けた。
アキレスと亀の話よりずっと面白い、と。
しかし、あとがよくなかった。
「いるのよねぇ、ときどき。気持ちの悪い話とか汚い話で盛り上がるお客さんが」

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王様 / 移民の歌
by hikihitomai | 2010-08-28 23:32 | 物見遊山
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