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K君の想い出



K君の想い出_c0069055_20254706.jpg


東新橋1丁目付近。
トンネル工事中。
奥の橋梁は首都高速都心環状線。
右上の緑の木々は浜離宮庭園。


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ジョージ・アダムス(George Adams)/ Imani's Dance

この楽曲には、想い出がある。
約30年前、25歳頃のことだ。
K君にこのレコードを貸したのだが、
貸したままになってしまい、後年、買い直したのである。

K君は小学校の同級生で、将棋の好敵手であった。
卒業後は疎遠になっていたが、
成人してからはときどき、
何の前触れもなくうちに遊びに来る変なヤツであった。

音楽を聞く趣味が共通していたので、
あるとき、このレコードをかけたところ、
彼はとても気に入ったようであった。

後日、再び彼が現れ、ミニコンポを手に入れたから、
あのレコードを貸してくれという。
妙な言い方だったので確かめたら、
彼はミニコンポを万引きしたのだと白状した。

大きな物でも何度かに分けて堂々と持ち出せば、
盗むことは可能だという。
大胆な犯罪者に店員は危険を感じるから、
見て見ぬふりをするのだとか。

信じ難い話ではあるが、
当時、彼は定職に就いておらず、
バイトもしていなかったから、
盗んだのは本当のことだったのかもしれない。

彼は悪びれるでもなく、かといって自慢するでもなく、
万引きの一部始終を淡々と語ったのである。
他にも色々な物を盗んだと言っていた。

彼は興味本位で浮浪者と生活してみたり、
怪しげな活動家に紛れ込んで警官に投石したり、
同性に体を売るようなこともしていた。

知人からK君とは付き合うなと忠告されたが、
私とK君の関係は平和であった。
K君にキチガイ呼ばわりされていたのは心外ではあるが。

そんな彼にレコードを貸したのだが、
貸したきりになってしまったのは、
彼が死んでしまったから。

親族で葬儀を済ませたとの連絡を受け、
彼が心臓マヒで死んだことを知ったのである。
25歳であった。

いっしょに弔問したジロちゃんが
帰り際、誰に言うでもなくつぶやいた。
その言葉を30年以上たった今でもよく覚えている。
「まったく、何をやってるんだよ、バカ野郎」











by hikihitomai | 2017-05-15 21:00 | HDR
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