「うば玉の 闇のうつつに かきやれど なれてかひなき 床の黒髪」(藤原定家) 髪が乱れるようなことをした後の歌。 闇の中で髪をかきやったのに、意味がなかった、と。 この歌の特徴は、 男が詠んだ歌としても成り立つし、 女が詠んだ歌でも意味が通ること。 しかも、詠み手が男か女かで、 歌の印象がかなり変わるのが面白い。 勝手な解釈だけどね。 この歌が男の立場で詠まれたとすれば、 情後の余韻にひたりつつ、 「せっかく整えたのに髪が乱れちゃったね」と、 女をいつくしむ歌になる。 男の胸中は平穏であり、充足感もあるだろう。 一方、女性の立場で詠まれた歌だと仮定すると、 情後の余韻は同じだけれど、 女の情念のようなものが表現されているように思えてくる。 乱れた髪はその象徴である。 いまはとても幸せだけれど、乱れたこの髪のように、 私の心が乱されることはないのかしら、と。 そう思うのは私が男だから、だと思う。 ******* シューベルト(Franz Schubert) / 夜と夢 原題は "Nacht und Träume"。 枕詞を挿入すると邦題は「うば玉の夜と夢」といったところか。 ソプラノはルネ・フレミング(Renee Fleming)。
by hikihitomai
| 2017-06-07 21:00
| 物見遊山
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